Binanceは、トークン化株式商品「bStocks」の資産規模が10億ドルを超えたと発表した。6月11日のサービス開始以降、累計取引高は400億ドルを上回り、対応銘柄も当初の5銘柄から、株式と上場投資信託(ETF)を合わせて約100銘柄まで増えている。Binanceは、同規模に達するまでの速さが他の同種のトークン化株式商品を上回ったとしている。
この動きは、一部の投資家が従来型の株式エクスポージャーをブロックチェーン取引や分散型金融(DeFi)に接続しようとしていることを示す。ただし、bStocksが表すのは対象株式に連動する権利の証明であり、投資家が株式そのものを直接所有することを意味しない。取引状況や流動性も、原資産である株式市場と必ずしも一致するわけではない。
株式とトークンの相互転換額は60億ドル超
条件を満たすBinanceの顧客は、対象となる現物株式を1対1の比率で対応するbStocksに転換できる。転換手数料はかからず、完了後にbStocksを再び株式の直接保有へ戻すことも可能だ。これまでの相互転換額は60億ドルを超えている。
bStocksはBinanceの関連会社BTech Holdingsが発行し、対応する株式はカストディ機関が保管する。Binanceはこれまで、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)の規制下にある証券会社Nest Trading Limitedを通じ、条件を満たす顧客に7000銘柄を超える米国株式とETFの取引機会を提供してきた。bStocksは、その株式保有に加わる別の選択肢という位置付けだ。
24時間取引と一部の証拠金利用に対応
トークン化されたbStocksは24時間取引でき、BNB Smart Chainに対応するウォレットへ出庫することもできる。これにより顧客は、株式に連動するエクスポージャーを自己管理型の環境へ移したり、対応するトークンを一部のDeFiアプリケーションで利用したりできる。株式をいったん売却して現金や暗号資産に替える必要はない。
Binanceは9月、条件を満たすCross Margin口座とPortfolio Margin口座に対し、一部のbStocksを担保として利用できる機能も開放した。顧客は株式に関連するエクスポージャーを維持しながら、トークンを別の取引ポジションの裏付けとして使える。証拠金を確保するために、まず株式を売却する必要はない。
取引時間別のデータからは、米国株式市場の通常取引終了後がbStocksの利用場面の一つになっていることもうかがえる。Binanceによると、7月のbStocks取引高のうち米国株式市場の通常取引時間内に発生した割合は38%にとどまり、残りは通常の取引時間外に行われた。
Binance Researchは、初期のbStocks利用者の41.5%が、それ以前にBinance上で対象となる現物株式やパーペチュアル商品を取引していなかったと分析している。ただし、この数字が示すのはBinance上の取引履歴だけであり、利用者が他のプラットフォームで株式投資をしていたかどうかまでは分からない。
Ondo FinanceのTVLとは単純比較できず
Binanceは、10月15日時点のDuneのデータを引用し、bStocksが資産規模10億ドルに到達するまでの期間が最も短いトークン化株式商品だと説明した。比較対象はこの水準に達するまでの時間であり、bStocksの現在の資産規模が同種商品全体で首位にあることを意味するものではない。
Ondo Financeは10月14日、トークン化した株式とETFの合計ロック総額(TVL)が13億ドルを超えたと発表した。Ondoの全商品を合わせたTVLは40億ドルで、トークン化された米国債、ポートフォリオ、プライベート市場の資産も含まれる。
このため、Ondoの全商品を合算した40億ドルのTVLを、bStocks単体の数字と比較することはできない。株式とETFに限った13億ドルを比較対象にする場合でも、Ondoが用いるTVLと、Binanceが示す運用資産規模(AUM)は統計上の定義が完全には同じではない。
通常取引時間外の流動性が課題に
国際通貨基金(IMF)は10月の報告書で、トークン化株式には従来の市場取引時間外にもアクセスできる利点がある一方、流動性は従来型株式を下回り、価格変動が大きくなる可能性があると指摘した。米国市場が休場し、原資産の株式を同時に取引できない時間帯には、トークン化商品の価格形成、売買スプレッド、ポジションを解消するまでの効率が焦点になる。
bStocksの資産規模、相互転換額、取引高は、オンチェーンの株式関連商品に対する利用関心を示す指標だ。ただし、これらの数字だけで、取引条件が従来の証券市場と同等になったと判断することはできない。投資家は、トークン化された権利、原資産である株式の権益、カストディの仕組み、さらにプラットフォーム上で認められる取引や担保利用の範囲を分けて確認する必要がある。