AaveのイーサリアムV3にある2つのステーブルコイン保護プールは、2026年9月17日から10月17日までの約1カ月で、合計残高が約1,243万ドル減少した。USDCとUSDTの追加報酬率はともに上昇したものの、ドル換算の残高は1億2,852万ドルから1億1,609万ドルへ9.67%縮小した。
これは、Aaveが関連する貸し出し損失をカバーするために確保している保護資本が小さくなった一方、資本1単位当たりのリスク補償は高まったことを示す。ただし、残高の減少がそのまま全額の資金流出や損失発生を意味するわけではない。預入量や退出に加え、資産価格や換算レートの変動もドル建て残高に反映されるためだ。
USDCは530万ドル、USDTは713万ドル減少
2つのポジションは、AaveのUmbrellaメカニズムに属する。参加者は対象資産をステークし、通常の貸し出し収益を受け取りながら、準備金に不足が生じた場合に資産が使用されたり、削減されたりするリスクを引き受ける代わりに追加報酬を得る。
9月17日23時01分(UTC)時点で、USDC保護プールのドル換算残高は5,873万9,600ドルだった。10月17日15時01分(UTC)には5,343万8,000ドルとなり、約530万ドル減少した。USDT保護プールは同じ期間に6,978万3,900ドルから6,265万5,700ドルへ縮小し、約713万ドル減った。2つのプールを合わせた減少額は1,242万9,900ドルだった。
比較時点の間隔は30日をわずかに下回る。残高はドル換算で示されているため、参加者による預入・退出の数量変化だけでなく、対象資産の評価額の変動も影響する。このため、残高が減ったという事実だけから、減少分のすべてが出金によるものだと判断することはできず、損失が発生したと直接推定することもできない。
| イーサリアムV3のUmbrellaポジション | 9月17日の資本 | 10月17日の資本 | 9月17日の追加報酬率 | 10月17日の追加報酬率 |
|---|---|---|---|---|
| USDC | 5,873万9,600ドル | 5,343万8,000ドル | 1.66% | 1.82% |
| USDT | 6,978万3,900ドル | 6,265万5,700ドル | 1.46% | 1.63% |
追加報酬率は上昇、年換算額はほぼ横ばい
USDCの追加報酬率は0.16ポイント、USDTは0.17ポイント上昇した。一方、基礎となる貸し出し利回りも変化しており、USDCは約3.60%から3.77%へ、USDTは約3.02%から3.12%へ上がった。基礎利回りは貸し出しによる収益を示し、追加報酬率はステーキングと、資産が削減される可能性のあるリスクに対応するものだ。両者は分けて計算する必要がある。
各ポジションのドル換算残高に追加報酬率を掛けると、9月17日時点の指示的な年換算額は約199万4,000ドルとなる。10月17日時点の残高と報酬率から算出した額も、ほぼ同水準だった。正確には、それぞれ199万3,923.12ドルと199万3,859.28ドルで、四捨五入するといずれも約199万4,000ドルとなる。
この計算は2つの時点のスナップショットから算出した年換算の運用水準であり、実際に支払われた金額や発生済みの支出を示すものではない。実際の報酬額は、期間中の金利の推移、ステーク残高、報酬配分、参加者の出入りによって変わる。
報酬曲線が資本1単位当たりの利回りを押し上げる可能性
Umbrellaの報酬コントローラーの仕組みでは、追加報酬率は総インセンティブ予算が増えた場合に限って上昇するわけではない。排出曲線は、実際のステーク量と目標ステーク量の比率に応じて、報酬規模を調整する設計になっている。
ステーク量が目標に達すると、総排出量は最大になる。ステーク量が目標値から目標値の120%までの範囲にある場合、総排出量は段階的に減少し、最低では最大排出量の約80%に近づく。ステーク量が目標値の120%以上になると、総排出量はおおむね一定に保たれる。
この仕組みの下では、報酬配分に参加する資本が減少しても、報酬の流れが一定またはそれに近い水準で維持されれば、より少ないステーク資本で分け合うことになる。その結果、資本1単位当たりの報酬率が上昇する可能性がある。
ステーク量が目標を下回った場合も、仕組みは資本1単位当たりの報酬を引き上げて参加を促す。ただし、総排出量は最大水準を下回る。過去2時点の残高と報酬率だけでは、この報酬曲線が両時点で2つのプールに実際に適用されていたかは確認できない。当時のコントラクトパラメーターと残高の状態を照合する必要がある。
20日間のクールダウンが保護資本に影響
Aaveでは資産とネットワークを分離して管理する設計を採用している。USDCのステークは主にUSDC準備金の不足をカバーし、USDTのステークはUSDT準備金に対応する。2つの残高を合算すれば全体規模は把握できるが、各準備金の保護能力はそれぞれに割り当てられたステーク資本に左右されるため、合計額だけで個別のカバー状況を判断することはできない。
実現した準備金不足が、適用される損失相殺枠を超えた場合に初めて、Umbrellaにステークされた資産が削減される可能性がある。損失相殺の第1段階ではDAO資金が先に充当され、その後に関連するステークプールが対象となる。
参加者にとっては、退出手続きも資金の利用可能性を左右する。Aaveには20日間のクールダウン期間があり、その後に2日間の引き出しウィンドウが設けられている。クールダウン中も報酬は積み上がるが、ステーク資本は引き続き削減の対象となり得る。
対象ポジションは、イーサリアムV3上のwrapped-aTokenによるUmbrellaステーキングで、識別子はstkwaEthUSDC.v1とstkwaEthUSDT.v1だ。これらのトークンには交換レートがあるため、データ上のドル換算残高には、資産評価額だけでなく交換レートの変化も含まれる。
Aaveのガバナンスでは2026年9月25日、Umbrellaの報酬支払いを継続するために必要な資金枠を更新する案が提出された。この案は、累積している未請求報酬、過去のステーカーに支払われるべき金額、そして2026年12月2日の配分終了日までに予定される残りの排出を対象としている。
提案は、排出率、目標流動性、クールダウンのパラメーター、損失相殺の仕組み、配分終了日を変更するものではない。また、必要な資金枠には過去の未払い分と今後の排出分の両方が含まれるため、全く新しい年間インセンティブ予算として単純に扱うことはできない。
10月17日時点では、2つのプールの追加報酬率は9月より高い一方、保護資本は同時に減少していた。現在のデータから確認できるのは、単位当たりのインセンティブが高まる一方で、基盤となるステーク資本が小さくなっているという組み合わせだ。残高減少の主因が資産価格、預入規模、退出行動のいずれだったのかについては、オンチェーン残高と当時のコントラクトパラメーターを併せて確認する必要がある。