米国では9月、住宅市場の減速が鮮明になった。一方、インフレ圧力はなお残っており、米連邦準備制度理事会(FRB)は今後の金利政策で難しい判断を迫られている。住宅関連指標がそろって弱含むなか、短期金利が今後数カ月で上昇すれば、すでに7.43%前後に達している住宅ローン金利がさらに上がり、住宅購入の負担や取引が一段と抑えられる可能性がある。
全米不動産協会(NAR)のチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は、9月の市場は住宅ローン金利の急上昇に押し下げられたと指摘する。雇用と所得の伸びは購入を支える要因だが、住宅の購入しやすさは金利の変化により敏感になっている。
住宅販売契約指数、2001年以来の低水準
NARが公表する住宅販売契約指数は、契約済みで引き渡し前の住宅取引を示す指標で、中古住宅販売の先行指標とされる。9月は前月比7.3%、前年同月比11.3%低下し、データを遡れる2001年以来の最低水準となった。市場予想は0.4%の低下にとどまっていた。
米商務省によると、住宅着工件数は季節調整済み年率換算で前月比5.2%減少した。市場予想の0.4%減を大きく下回る結果だ。建築許可件数も0.2%減となり、ダウ・ジョーンズの調査で見込まれていた2%増とは対照的だった。うち一戸建ての許可件数は84万5,000戸で、8月から4%減少。2023年以来の低水準となった。
住宅建設業者の景況感も14年ぶりの低水準に落ち込んだ。Fwdbondsのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は、新築住宅のコストを引き下げるような米国の政策転換が明確にならない限り、市場の停滞がさらに深まる可能性があるとの見方を示した。
7%超の住宅ローン金利が売買を抑制
Mortgage News Dailyのデータでは、30年固定型住宅ローン金利は9月の大半で7%を上回り、月末には約7.6%となった。5年前には一時3%近くまで低下しており、低い借入コストが新型コロナウイルスの流行期に住宅需要と価格を押し上げていた。
金利上昇は購入希望者だけでなく、現在の住宅所有者による売却や住み替えも難しくしている。住宅ローンを利用する人の95%超が、現在の市場金利を下回る金利で借りており、約65%は金利差が2ポイント以上ある。売却後に新たなローンを組めば大幅に高い金利を負担することになるため、売却を控える「金利ロックイン」現象が起きている。
ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ロニー・ウォーカー氏は顧客向けリポートで、住宅市場は底入れする前にさらに弱含む可能性があると述べた。同社は住宅投資について、今後3四半期にそれぞれ2.5%、4%、1%減少すると予想する。住宅ローン金利が低下しなければ、落ち込みはさらに大きくなり得るとしている。
ゴールドマンは、2027年の一戸建て着工戸数を約87万5,000戸と見込み、今年から大きく変わらないと予測。中古住宅販売は390万戸と、2026年に近い水準を見込む一方、コロナ禍前の2019年と比べると26%少ない。ウォーカー氏は、住宅供給の不足が市場の一段の悪化を抑える一方、購入負担の重さが次第に大きな問題となり、取引や新築を引き続き圧迫するとみている。
インフレがFRBの利下げ余地を狭める
住宅市場の弱さだけであれば、FRBは利下げで借入コストを抑え、需要を支える選択肢を取り得る。しかし、最近の消費者物価や生産者物価のデータからは、インフレ鈍化を裏付ける十分な材料が出ていない。米労働統計局のデータでは、最終需要財の卸売価格が2.6%上昇し、同統計が始まった2009年12月以来の高い伸びの一つとなった。
FRB当局者は、人工知能(AI)関連投資が物価に及ぼす影響にも注目している。旺盛なAI投資を背景に半導体や電子製品のコストが上昇する一方、AI関連投資による経済効果が住宅など弱い分野の下押しを一部相殺する可能性もあると政策担当者はみている。
市場では、FRBが来週の会合で政策金利を据え置くとの見方が優勢だ。ただ、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatchツールによると、金利先物には12月に0.25ポイント利上げするとの見方が強く織り込まれており、2027年3月にも追加利上げの可能性が示されている。この金利経路が実現すれば、住宅ローン金利は購入者や開発業者にとって負担の大きい水準にとどまりかねない。
ユン氏は、住宅ローン金利はこれまでFRBの短期金利の引き上げ幅を大きく上回る上昇を示しており、当面のピークに近づいている可能性があるとみる。売り手と買い手は、融資環境が改善するまで取引を見合わせている可能性もある。住宅市場の動向を左右するのは、住宅ローン金利が低下するか、そしてインフレ指標がFRBによる追加引き締めの停止を許すかどうかだ。