欧州中央銀行(ECB)の調査によると、ユーロ圏の銀行では7〜9月期に個人向け資金調達環境が悪化したとの回答が増え、その純割合は9%と、調査が始まった2011年以降で最も高くなりました。企業の銀行借入金利が上昇したとの回答も増えています。ECBが10月29日に金融政策を発表するのを前に、銀行の資金調達や借入コストの変化を示すデータとなりました。ただし、ECBは個人向け資金調達環境の悪化を「緩やか」と評価しています。
個人向け資金調達の悪化、純割合は9%
ECBが10月27日に公表した銀行融資調査では、7〜9月期に個人向け資金調達の環境が悪化したと答えた銀行の純割合は9%でした。4〜6月期の3%から上昇しています。この数値は、環境が悪化した銀行の割合から改善した銀行の割合を差し引いたものです。すべての銀行が同程度の困難に直面したことを示すものではありません。
銀行によると、企業向け融資条件の厳格化には、主に貸出金利の上昇が影響しました。資金調達コストやバランスシート上の制約も要因です。一方、融資審査基準を厳しくした主因は、リスク認識の変化とリスク許容度の低下でした。資金調達上の制約が審査基準に与えた影響は、全体としておおむね中立でした。資金調達環境、貸出金利、審査基準では、それぞれ異なる圧力が表れています。
企業の46%が銀行借入金利の上昇を報告
ECBが10月26日に公表した企業金融調査では、銀行借入金利が上昇したと回答した企業の純割合は46%となり、前回調査の42%から上昇しました。銀行融資や信用枠を申請した企業のほか、銀行の当座貸越やクレジットカードの借越を利用した企業が対象です。金利上昇と回答した割合から、低下と回答した割合を差し引いて算出しています。
ただし、今回の調査では回答企業の構成が大きく変わり、新規参加企業が過半数を占めました。回答対象の期間も一様ではなく、約半数は7〜9月、残りは4〜9月の状況について回答しています。標本構成や調査期間の違いは、調査回ごとの比較に影響する可能性があります。ECBは特に、数値の予想との比較では標本の変化に留意する必要があると指摘しました。
マネーと貸出残高は引き続き増加
資金調達環境が厳しくなった一方で、通貨供給量や貸出残高は縮小に転じていません。ECBが10月27日に公表したデータでは、9月の広義マネーの前年比伸び率は3.5%でした。調整後の企業向け融資と家計向け融資の伸び率は、それぞれ4.2%、3.1%で、いずれも8月と同じでした。貸出残高が増えていても、新たな借入が高コストになったり、利用しにくくなったりすることはあり得ます。
指標を比較する際は、貸出残高の伸びと資金調達のしやすさを分けて見る必要があります。前者は既存の貸出残高全体の変化を示し、後者は銀行や借り手が現在直面する条件により直接関わります。企業調査で借入金利の上昇を示す割合が増えたことも、資金調達コストが目立った変化となっていることを示しています。
ビットコイン市場への波及は資金調達次第
資金調達コストの変化は、投資家の借入余力やリスク許容度を通じてビットコイン需要に影響する可能性があります。ただし、これは波及経路についての見立てであり、ECBの調査が直接測定した結果ではありません。信用コストの上昇で投資家の借入が減ったり、リスクを取る資金が細ったりすれば、リスク資産への需要が弱まる可能性があります。一方、ドル建ての資金調達が安定し、ビットコイン需要が続く場合には、欧州の資金調達圧力が暗号資産市場に波及していることを示す証拠は限られます。
2023年の国際通貨基金(IMF)のワーキングペーパーは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めが、投資家のリスクテイクを通じて暗号資産価格の共通因子に影響すると分析しました。この知見を欧州の資金調達コストと暗号資産市場の関係に当てはめるのは推論であり、ECBの銀行調査が示した結論ではありません。次の政策上の節目は、10月29日14時15分(中央欧州時間)に予定されるECBの決定です。