ニューヨークのAI企業Daytonaの共同創業者兼CEO、Ivan Burazin氏は、AIエージェントを効果的に運用できる従業員には、人を管理した経験がある場合が多いと指摘した。企業がコード作成や製品開発の多くをAIエージェントに任せるなか、タスクの指示方法や成果の確認、協業の進め方が、スタートアップの生産性と組織規模を左右する要素になっている。
Burazin氏によると、米国と欧州に約30人の従業員を抱えるDaytonaでは、ここ数カ月でAIエージェントの利用を社内で拡大している。現在は16人のエンジニアが、1人当たり平均5体のAIエージェントを稼働させており、チームは従業員が自らコードを書く従来型の体制ではなくなっているという。
Daytona、エンジニア1人で複数のAIエージェントを運用
Burazin氏は、過去に他者を管理した経験のある従業員ほど、AIエージェントにタスクを正確に理解させやすいとみている。こうした従業員は通常、「入力」と「出力」を区別し、どのような結果を求めているのか、どの手順で作業すべきなのかを具体的に伝えられるためだ。
一方、技術力が高くても人の管理経験がないエンジニアは、個人貢献者としての働き方で考え続けることがある。その場合、明示されていない要件でも相手やAIエージェントが理解できると考えがちだ。結果が期待どおりでなければ、負担や挫折感を覚える一方で、目標や実行手順、納品基準をさらに細かく分けて伝えられない可能性がある。
Burazin氏にとって、AIエージェントへの指示は本質的に管理業務の一つだ。利用者は曖昧な依頼を出すだけでなく、目標、制約条件、期待する成果を示す必要がある。
Burazin氏、従来型の管理職だけに依存せず
ただしBurazin氏は、人の管理経験が技術力に取って代わるとは考えていない。市場部門であれエンジニアリング部門であれ、技術知識のない管理者がチームに十分な支援を提供するのは難しいという。従業員はタスクの割り振りや進捗管理だけを担うのではなく、実際の業務にも自ら関わるべきだとしている。
Daytonaは、Burazin氏、Vedran Jukić氏、Goran Draganić氏が2023年に創業した。企業向けに、安全なサンドボックス基盤を提供し、隔離された環境でAIエージェントやAIが生成したコードを実行できるようにしている。同社は最近、シリーズBで4800万ドルを調達した。
AIエージェントがテック企業の管理体制を変える
Burazin氏の見方は、テクノロジー業界で近年進んできた管理職の役割の変化とも重なる。Meta、Amazon、Googleなどはこれまでに中間管理職を削減し、組織階層を減らして効率を高める動きを進めてきた。AIツールがソフトウエア開発の工程に入り込むなか、経営幹部がプログラミングや製品開発、従業員管理を同時に担うケースも増えている。
Daytonaにとって、1人のエンジニアが複数のAIエージェントを運用する体制は、人間のチームを小規模に保つことにつながる。Burazin氏は、同社の採用ペースについて「非常に遅い」と説明している。従業員が1人増えるたびに、新たなコミュニケーション関係と管理上の複雑さが生じるためだ。
同氏は、AIエージェントによって企業はより少ない人数で多くの業務を処理できるとみている。人員が減ればコミュニケーションの経路も短くなり、組織の複雑さを抑えながら業務を前に進めやすくなる。
Daytonaの運用例が示すのは、AIエージェントが単に反復的なコーディング作業を減らすだけではないという点だ。従業員には、目標を明確に示し、タスクを分解し、納品物を評価する管理能力が求められる。こうした能力が、AIツールを実際の生産性へ結びつけられるかどうかを左右する可能性がある。