Stellarは2026年9月17日、メインネットでProtocol 28を稼働させた。今回のアップグレードでは、Sorobanスマートコントラクトの一括アップグレード機能やデータ移行ツール、一部のコンセンサス処理の改善を導入した。ステーブルコイン、分散型金融(DeFi)、現実世界資産(RWA)のトークン化が拡大するなか、ネットワークがより大きな負荷を扱うための基盤整備が進んだ格好だ。稼働前日の9月16日には、予定されていたメインネット投票も完了している。
同じ時期に、Stellarでは新たな継続処理記録も確認された。ブロックチェーンデータでは、100ブロック連続の平均処理性能が毎秒211件を超え、同ネットワークで過去最高の継続スループットとなった。ただし、Stellarは並列トランザクションセットのダウンロード機能を段階的に有効化している。このため、211TPSをProtocol 28単独による性能向上とみなすことはできない。今回のアップグレードは、ネットワークが高負荷に対応するためのインフラを整える側面が大きい。
CAP-85、Sorobanコントラクトを一括更新
Protocol 28に含まれるCAP-85は、同じスマートコントラクトを複数のインスタンスで運用するプロトコルを主な対象とする。開発者は、外部で管理する実行コードを各コントラクトから参照できるようになる。共有される参照先を変更すれば、その参照を利用するすべてのコントラクトを、1回のアトミックな処理で新しいコードへ切り替えられる。
この仕組みは、セキュリティ上の問題への対応やソフトウエアの移行が必要なアプリケーションで、新旧コードが並行して稼働する期間を短縮する可能性がある。従来は、同じアプリケーションのコントラクトごとに新旧バージョンが一定期間混在することがあった。新しい構成では、開発チームが切り替え作業をより一元的に進められる。
ただし、CAP-85の採用は義務ではない。既存のSorobanアプリケーションは、この構成を導入するかどうかを個別に判断する必要がある。アップグレードが実際の運用効率につながるかは、各開発チームの導入スピードや互換性への対応にも左右される。
CAP-86、オンチェーンデータの段階移行に対応
CAP-86は、アプリケーションの稼働後に生じやすい別の課題、つまりブロックチェーン上に保存済みのデータ構造を変更する作業を対象とする。新たに追加されたスパースマップ機能は、欠落したフィールドや追加されたフィールドを扱えるため、すべての記録を同時に新しいデータ形式へ合わせることなく、段階的にデータを移行できる。
長期間運用され、データ量が大きいオンチェーンアプリケーションにとって、この機能は運用上の論点になりやすい。コントラクトの項目が増えたり、事業ロジックが変わったりすると、大量の過去データを移行しなければならない場合がある。CAP-86はこうした変更を段階的に処理できるようにするが、具体的な移行計画は各プロジェクトが決める。既存アプリケーションが自動的に更新されるわけではない。
CAP-83でコンセンサス処理を調整
Protocol 28では、CAP-83によってコンセンサス層の処理も変更された。設計上、検証者はトランザクションセット全体がまだ届いていない段階でも、コンセンサス手続きの一部を進められる。到着が遅れたトランザクションセットや無効なセットについては、ネットワークが破棄する仕組みも追加された。
Stellarでは現在、並列トランザクションセットのダウンロードを段階的に有効化している。そのため、CAP-83によるコンセンサス処理の変更と211TPSの記録を直接結びつけることはできない。関連機能の導入が進むなかで、検証者が高負荷や遅延したトランザクションセット、無効なデータをどのように処理するかが、ネットワークの実効性を見極めるポイントになる。
ステーブルコイン供給量は8億8400万ドル近辺
技術面の更新と並行して、Stellar上の金融活動も拡大している。過去1年間で、同ネットワーク上のステーブルコイン供給量は8億8400万ドル近辺まで増加した。米ドル連動資産の規模では、Stellarは比較的大きなブロックチェーンの一つとなっている。
分散型金融のTVL(預け入れられた資産の総額)も上昇傾向を示し、2026年8月には約3億1900万ドルの直近ピークに達した。その後は約2億9400万ドルまで減少している。ステーブルコイン供給量とDeFiのTVLが変動していることは、ネットワーク上で運用される資金の規模がなお一定していないことを示す。Protocol 28がアプリケーションの保守効率を改善するかどうかは、今後のユーザーとプロジェクトによる採用状況と合わせて判断する必要がある。
RWAのトークン化では、Stellar上の規模はさらに大きい。StellarのRWA時価総額は約33億ドルで、直近30日間に約1億4940万ドル増加した。この指標では、Stellarは関連規模で3位のブロックチェーンに位置している。
大規模なトークン化資産を扱うアプリケーションでは、コードの修正、コントラクトの更新、データ構造の変更に伴う運用作業も複雑になりやすい。CAP-85とCAP-86がこうした作業の調整コストを抑えられるかは、実際の資産発行や管理の現場で検証されることになる。
XLMは上昇後、0.18ドル前後へ反落
Protocol 28の稼働前後、XLMは24時間で約4%上昇し、一時0.1863ドルを付けた。その後は反落し、執筆時点では約0.18ドルで推移している。値動きはプロトコルの稼働時期と重なったものの、今回のアップグレードが上昇の直接的な原因だと示す証拠は現時点で確認されていない。
Protocol 28の影響範囲を左右するのは、今後の開発者と検証者による実際の採用になる。Sorobanのプロジェクトは新しいコントラクト管理機能を自ら導入する必要があり、Stellar側も高いトラフィックに対応するコンセンサスおよびトランザクションセット処理の改善を段階的に進める。主要な資産発行者やオンチェーンアプリケーションがいつこれらの機能を採用するかが、プロトコルがネットワーク上の金融活動に与える実際の効果を測る材料となる。