米大手銀行が来週から7~9月期決算を発表するのを前に、金融業界の内部関係者による自社株買いが約23年ぶりの低水準となった。VerityDataによると、同四半期に自社株を少なくとも一度買い付けた金融業界の関係者は298人。2004年の集計開始以来で最も少なく、従来の最低だった2024年7~9月期の302人も下回った。
ウォール街のトレーディング業務が活発で、今年は大型IPOが相応の収益をもたらした一方での減少だ。経営陣が自ら資金を投じて自社株を買う動きは、株価水準や事業見通しに対する見方を測る補助的な材料とされる。ただし、この指標だけで銀行の業績や株価の先行きを判断することはできない。
金融業界の買い手は2004年以降で最少
VerityDataのリサーチ責任者、ベン・シルバーマン氏によると、7~9月期に自社株を少なくとも一度買った金融業界の「ユニーク・バイヤー」は298人だった。大手銀行や資産運用会社、保険会社など、3,000社を超える金融サービス企業を対象としている。
市場全体でも、内部関係者による買い付けは減少した。7~9月期の買い手は1,290人で、4~6月期の1,580人から18%減った。金融業界では売り手のほうが買い手より多かったものの、売り手数は通常の水準から大きく外れていない。
内部関係者の売却は、買い付けに比べて意図を読み取りにくい。納税資金の確保や個人資産の分散、事前に定めた取引計画の実行などが売却の理由となることもあるため、個別の売りが経営陣の会社評価低下を示すとは限らない。一方、経営陣自身による買い付けは、投資家から信頼感の表れと受け止められやすい。
減少の意味をめぐり専門家の見方は分かれる
ハーバード・ロー・スクールのジェシー・フリード教授は、金融業界の経営幹部による自社株買いの減少は、業界に対する弱気の兆候となる可能性があると指摘する。経営陣の買い付けは、企業が今後、市場平均を上回るリターンを上げることと一定の関連があるという。
これに対し、シルバーマン氏は、買い付けの減少が内部関係者の慎重姿勢を反映している可能性を挙げる。株価が経営陣の考える妥当な価値を大きく上回っている場合、割高な水準で持ち高を増やすことを避け、買いを控えることもあり得る。
ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスの金融学教授、ネジャット・セホン氏は、このデータに銀行株を予測する強い力があるとはみていない。内部関係者の取引が市場全体の将来リターンと関連する場合はあるものの、金融業界、とりわけ銀行株は、この指標だけでは判断しにくい分野だと説明する。
銀行の業績は金融政策や金利、インフレといったマクロ要因に大きく左右される。こうした変数は企業経営者が事前に把握できるとは限らず、社内の情報だけをもとに将来の株価を正確に見通すのは難しいという。
大手行の決算で市場の見方を確認
投資家の関心は、主要銀行の7~9月期決算に移る。JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスは10月13日、モルガン・スタンレーは10月14日に決算を発表する予定だ。
今年に入って銀行の利益と収入は全体として伸びてきたが、IPO市場は足元で減速している。OuraとBamboo Insuranceは先月、上場計画を延期した。同時期の米連邦準備制度による利上げも、企業の資金調達やM&A活動を圧迫する可能性がある。
また、大手企業は人工知能(AI)関連プロジェクト向けに大規模な融資を調達している。借り手企業の返済能力が今後低下すれば、銀行を含むウォール街の金融機関では信用リスクや資産の質への懸念が強まる可能性がある。こうした資金需要が銀行の収入やリスクの状況にどう影響するかは、なお見極めが必要だ。
銀行株は最近、相場全体を下回る動きとなった。10月7日時点で、KBW銀行株指数は過去1カ月に約11%下落した一方、S&P500種株価指数は1%上昇した。ただし、KBW銀行株指数は年初来では約3%上昇している。内部関係者の買い付けが記録的な低水準となり、銀行株が短期的に軟調だったことは決算を読む際の材料の一つとなる。最終的な評価には、利益や貸出債権の質、金利感応度、経営陣の見通しも欠かせない。