人工知能(AI)ツールが暗号資産ゲームの開発コストと参入障壁を引き下げている。Illuvium共同創業者のKieran Warwick氏は、これまで数カ月を要した投機色の強い暗号資産「ミームゲーム」が、現在では数日と約1,000ドルで公開できる可能性があると指摘した。この傾向が続けば、今後1年で最大10万本の類似タイトルが登場する可能性がある。なかには数日しか存続せず、開発者が短期間で収益を確保することだけを目的とするゲームも含まれるという。
こうしたゲームは通常、デジタル資産や報酬、プレーヤー間の投機的な取引を中心に設計される。2024年にミームコイン市場を押し上げた取引パターンと共通する部分も多い。Warwick氏は、ミームコイン市場で次々と新トークンを発行する「連続発行者」のように、新しいゲームを繰り返し投入する開発者が現れる可能性があるとみている。
ミームコインからゲームへ向かう投機資金
2024年には、Pump.funなどの発行プラットフォームがトークン作成のハードルを下げ、ミームコイン市場が急拡大した。CoinGeckoのデータによると、ミームコインの時価総額は2024年12月に1,506億ドルへ達したが、その後2025年11月には約69%減少し、472億ドルまで縮小した。
この相場動向をめぐっては、暗号資産業界内でも見方が分かれている。支持派は、ミームコインが高ボラティリティ資産を求めるトレーダーの需要を満たしたとみる。一方、批判派は、大量の資金が実用性の高いプロジェクトから流出し、暗号資産市場全体のイメージを損なったと指摘する。
Warwick氏は、同様の投機資金が暗号資産ミームゲームへ向かう可能性があると考えている。一部のトレーダーが収益の一部をPump.funなどのプラットフォームに投入するなか、短命なゲームが投機活動の新たな入口や受け皿になる可能性があるためだ。ただし、ゲームの多くが数日で消える状況は、長期的には暗号資産ゲームのエコシステムにとって必ずしも好ましくないという。プロジェクトが急速に流動性や注目を失えば、参加者が損失を負う可能性もある。
Warwick氏が考えるIlluviumの長期的な方向性は、高品質なゲームと、ブロックチェーン上での資産所有権を組み合わせるモデルだ。Illuviumの旗艦タイトル「Overworld」は開発開始から6年以上が経過しており、リメイク後の完全版は2027年第1四半期のリリースを予定している。
継続利用がゲームの存続を左右
Animoca Brandsの最高経営責任者(CEO)であるRobby Yung氏も、短命なミームゲームが長期的なカテゴリーを形成できるかについて慎重な見方を示している。開発コストを抑えられるゲームであれば、市場への供給が短期間で増える可能性はある。しかし、ゲーム業界ではユーザーの継続率が中核的な指標であり、継続して参加するユーザーがいなければ、安定したカテゴリーとして定着するのは難しい。
Mirai Labsの共同創業者兼CEO、Corey Wilton氏は、AIによる供給増が暗号資産ゲームの需要不足を補えるのか疑問を呈した。同社はこれまで市場に6〜7本のゲームを投入したものの、最終的にはWeb3分野そのものに、こうした製品への需要が十分に存在しないと判断したという。
DappRadarのデータによると、現在、ゲーム分野の分散型アプリケーション(dApp)2,356本の総ロックアップ価値(TVL)は約2億3,220万ドルにとどまる。上位50のゲームトークンを合わせた時価総額は約38億ドルだ。Yung氏は、いわゆるアルトコインに需要と流動性が不足していることは問題だが、市場にはプレーヤーの関心を引く、本当に面白いゲームも十分に存在していないと指摘する。暗号資産ゲームの数が限られているため、問題の原因がブロックチェーンモデルそのものにあるのか、質の高いゲームの供給不足にあるのかも判断しにくい状況だ。
AIはすでにゲーム開発に導入
AIはまだ検証されていない概念にとどまらない。ブロックチェーン・ゲーム・アライアンスが2025年に業界関係者506人を対象に実施した調査では、32.8%の回答者が、自社でゲーム設計やコンテンツ制作へのAI導入を実施、または試行していると答えた。
Yung氏は、AI開発ツールの登場を、2010年前後におけるモバイルゲーム市場の初期拡大になぞらえている。当時は、モバイルゲームの開発コストと期間がPCやコンソール向けゲームを下回り、より多くのスタジオが市場に参入した。低コスト化によって低品質な製品が大量に生まれるとの懸念もあったが、結果としてゲームの供給量は増え、消費者の選択肢も広がった。
暗号資産ゲーム市場が同じ経路をたどれるかは、プレーヤーの需要、ゲームの品質、資産の流動性に左右される。足元でも資金を集めるプロジェクトは存在する。Robinhoodチェーン上で開発されるWeb3農場ゲーム「Yield Fields」の開発チームは、2026年10月14日、非代替性トークン(NFT)形式のデジタル土地を販売し、約830万ドルを調達した。ゲームは同月末の公開を予定している。
これらの動きは、AIによってより多くのチームが暗号資産ゲームを短期間で試せるようになる可能性を示している。ただし、製品数の増加が、そのままプレーヤーの継続利用や市場流動性の改善につながるわけではない。短期的な投機参加者にとっては公開までの速さが注目点となる一方、開発会社にとっては、継続的なプレーと安定したコミュニティーを形成できるかが、プロジェクトの存続を左右する。