LBankは暗号資産に加え、株式やコモディティへ取引対象を広げている。利用者は、エヌビディア株を直接保有せずに、株価に連動する商品を通じて値動きへのエクスポージャーを得られる。暗号資産取引所が、2027年前後に向けて人工知能や経済政策、伝統的な金融市場への取引需要を取り込もうとしている形だ。
LBankのマーケティング・パートナーシップ担当バイスプレジデント、Kaia Wong氏は、利用者が慣れ親しんだ暗号資産取引プラットフォームで「暗号資産以外の機会」も取引したいと考えていると説明した。LBankは現在、株式とコモディティを合わせて250を超える取引ペアを提供しており、伝統的金融商品に関する1日当たりの取引高は最大30億ドルを超えるという。
株価連動型商品は株式の直接保有とは異なる
LBankでエヌビディア関連の商品を購入しても、利用者が取得するのはエヌビディア株そのものではなく、株価に連動する商品だ。Kaia Wong氏も、この商品について利用者が保有するのは「株価連動型商品」だと明確に説明しており、経済的なエクスポージャーや取引体験は、従来の証券会社を通じて株式を購入する場合とは異なる可能性がある。
この違いは、株式取引に慣れた利用者にとっても重要だ。見慣れたティッカーや企業名が表示されていても、その企業の株式を所有していることを意味するわけではない。商品の構造、決済方法、取引時間、流動性、想定されるカウンターパーティーとの取り決めなどが、最終的な取引結果に影響する可能性がある。同様の商品が複数の取引プラットフォームに登場するなか、利用者は注文を出す前に、購入する資産の具体的な形態を確認する必要がある。
トークン化株式の市場規模は1年で395%拡大
株式のトークン化市場も拡大している。ブロックチェーン上の関連データによると、トークン化株式の未償還価値は約31億7000万ドルで、1年前から395%増加した。この数字はチェーン上に存在する価値の残高を示すもので、取引高とは異なる。そのため、市場の実際の売買回転を直接判断する指標ではない。
暗号資産取引所にとって、株価連動型商品は伝統的な金融資産と暗号資産の利用者層をつなぐ手段となる。一方、利用者にとっては選択肢が増えるだけでなく、株式の所有権、価格へのエクスポージャー、ブロックチェーン上の資産がそれぞれ異なることを見分ける必要が生じる。
ブランド提携とUSDT建ての取引キャンペーン
LBankは新規利用者の取引開始を促すため、文化関連ブランドとの提携を通じてプラットフォームの認知度も高めている。提携先にはNobody SausageとPudgy Penguinsが含まれる。Kaia Wong氏は、商品が似通いやすい市場で利用者との距離を縮めるため、取引に「声と顔」を持たせたいと説明した。
LBankが8月にPudgy Penguinsと実施した提携には、見出し上では総額500万USDT、本文で示された金額では総額50万USDTのキャンペーンが含まれ、ブランドマーケティングと取引インセンティブを組み合わせた。Kaia Wong氏は、報酬によって利用者が初回取引を完了するきっかけは作れるものの、長期的で安定した取引高につながるとは限らないと述べた。
利用者が継続的にプラットフォームへ戻るかどうかは、最終的には利用者が本当に関心を持つ市場を提供できるか、また信頼できる取引体験を維持できるかにかかっているという。同氏は、ユーザー定着率をプラットフォームの業績を左右する重要な要素と位置付けた。ただし、今回の説明ではLBankの具体的な定着率は明らかにされていない。
Robinhoodのチェーン関連トークンに専用取引区画
LBankが取扱市場を広げるもう一つの方向は、新興のブロックチェーンエコシステムだ。Robinhoodが7月にパブリックメインネットを立ち上げた後、LBankは同ネットワークに関連するトークンの専用取引区画を設けた。
Kaia Wong氏によると、LBankは各トークンを個別に審査し、プロジェクトの品質、情報開示、保有者の構成、利用可能な流動性を確認している。一方で、ブロックチェーンネットワークにRobinhoodの名称が含まれていることは、そのネットワーク上で発行されるすべてのトークンを同社が承認していることを意味しないとも強調した。購入者にとって、資産を保管したり取引の場を提供したりするプラットフォームと、特定の資産やプロジェクトを運営する組織は、必ずしも同一ではない。
表示価格どおりに売却できるとは限らない
新しいトークンを取引する際には、買値だけでなく、実際に売却できるかどうかも重要になる。表示価格の近辺に十分な買い注文がなければ、売り注文は注文板を下方向にたどって約定し、利用者が想定した価格を下回る可能性がある。
Kaia Wong氏は、取引所には透明な情報提供と一貫したマッチングルールが求められると述べた。見かけ上の取引高だけでなく、注文がどのように約定したかも、市場が利用者の取引に実際に対応できているかを示す要素になるという。上場資産が増えれば選択肢は広がるが、各取引ペアの背後にある流動性が、利用者が速やかに売買を完了できるか、価格がどの程度乖離するかを左右する。
「100倍」表示は過去実績と将来の約束を区別
LBankが掲げる「100倍の宝石」という表現は、収益の示し方をめぐる論点も生んでいる。Kaia Wong氏は、この表現を見出しや過去の結果を示すものと説明し、平均的な利用者が同じ結果を得るとの約束ではないとした。また、多くのトークンは時間の経過とともに同じ上昇経路をたどらないとも認めている。
初期段階のプロジェクトでは、価格変動と流動性の変化が実際の損益に直接影響する。あるトークンが過去に記録した最大上昇率だけでは、一般の利用者が同じ結果を得られることは示せない。実際の損益を決めるのは、購入価格、保有期間、最終的な売却価格だ。流動性が低下すれば、理論上の上昇率と実際に成立可能な価格との間に差が生じる場合もある。
取引対象の拡大で商品説明が焦点に
LBankは創立11周年のテーマに「Come as you are」を掲げている。Kaia Wong氏は、利用者の現在の経験水準に合わせてサービスを提供し、それぞれのペースで進めるよう支援する必要があると述べた。
取引対象がビットコインなどの暗号資産から、株価連動型商品、コモディティ、新しいチェーンのトークンへ広がると、課題は単に商品数を増やすことにとどまらない。ビットコインの売買に慣れた利用者であっても、エヌビディア関連商品を購入する前に、自分が保有するのは株式そのものではなく価格へのエクスポージャーであること、さらに流動性、マッチングルール、決済の取り決めを確認する必要がある。
取引所にとって、これらの情報を注文前に明確に提示できるかどうかが、商品拡大後の取引体験を左右する。利用者にとって、プラットフォーム上の名称と表示価格は出発点にすぎず、具体的な資産構造と実際の約定条件を個別に確認することが欠かせない。