中間選挙で民主党が米下院と上院の多数派を確保する見通しとなり、共和党の議会支配が終わる。ドナルド・トランプ大統領は任期後半、党派色の強い政策を議会で成立させにくくなる一方、民主党は医療保険補助や関税、イラン戦争を巡る法案を優先し、トランプ氏や側近への調査にも乗り出す構えだ。
議会の勢力図は変わるものの、大統領の政策手段がなくなるわけではない。トランプ氏は法案への拒否権を持ち、民主党が拒否を覆すには両院でそれぞれ3分の2の賛成が必要となる。上院では、通常の議事妨害を乗り越えるための60票にも届かない見込みだ。立法を巡る対立と調査が、今後2年間の議会運営を左右しそうだ。
トランプ氏、拒否権行使を示唆
トランプ氏は選挙の前後、民主党が主導する議会との向き合い方について、大統領の拒否権を強調した。FOXニュースのインタビューでは、民主党から送られてきた法案が「ばかげている」場合は拒否すると発言。一方で、時間がたてば双方が協議し、政策を進められる可能性にも触れた。これに先立ち、共和党が敗北すればすべての法案に拒否権を行使すると述べていた。
任期後半の具体的な方針は、まだ詳しく示していない。トランプ氏は現行政策の継続を最優先に挙げ、民主党が議会の主導権を取り戻せば、自らが「拒否権大統領」になる可能性があると語った。ホワイトハウスと議会が立法権限を巡って対立する展開が予想される。
医療保険補助の復活と関税撤廃を優先
次期議会でも下院民主党トップを務める見通しのハキーム・ジェフリーズ下院議員(ニューヨーク州)は、来年1月の新議会招集後に法案を相次いで提出する準備を進めている。民主党は議員の就任後、最初の100時間に、期限切れとなった拡充版の医療保険補助を復活させる法案や、トランプ氏が今年署名したメディケイド削減策を撤回する法案を提出する方針だ。
また、トランプ政権が導入した広範な関税を取り消し、輸入税の設定における議会の役割を改めて明確にする法案も目指す。イラン戦争の終結を求める、あるいは戦闘継続に議会の承認を求める案も議題となる。民主党は生活費の抑制を優先課題に掲げ、ガソリンや食品の価格に焦点を当てている。
ただし、これらの法案が成立するかは不透明だ。大統領の拒否を覆すには上下両院で3分の2の賛成が必要だが、民主党だけでは届かない見通し。上院でも、議事妨害を回避するのに通常必要な60票を確保できないとみられ、少数党となる共和党も引き続き強い歯止めとなる。
法案が成立しなくても、政治的な争点にはなり得る。民主党は支持の高い法案への拒否をトランプ氏に迫り、2028年の選挙で争点化する可能性がある。
下院監視委、トランプ家の事業取引を調査へ
下院委員会の主導権を握れば、民主党は現行規則に基づいて召喚状を発行できる。下院監視・政府改革委員会の委員長には、ロバート・ガルシア下院議員(カリフォルニア州)が就く見通しだ。同氏は、トランプ家の事業取引、企業腐敗を巡る疑惑、連邦移民当局による権限乱用の申し立てを調べると表明。性犯罪で有罪判決を受けたジェフリー・エプスタインに関連する資料についても、トランプ政権の対応を改めて検証する考えを示した。
開票が進む中、ガルシア氏は調査計画を「よい弁護士を雇っておくように」と表現した。メリーランド州選出のジェイミー・ラスキン下院議員も以前から政府に記録の提出を求め、トランプ氏が関税の適用除外を通じて特定業界を優遇したと主張している。同氏は企業幹部がトランプ氏に贈り物を渡したとも述べた。いずれも民主党側の主張であり、今後の調査では事実関係や文書の確認が焦点となる。
上院民主党も調査を強化する構えだ。マサチューセッツ州選出のエド・マーキー上院議員はSNSへの投稿で、召喚状を印刷する紙のために新たな森林を植える必要があると皮肉った。調査が新議会の時間を大きく占めれば、ホワイトハウスと民主党の協力余地がさらに狭まる可能性がある。
共和党議員がトランプ氏と距離を置くか
トランプ氏は最初の大統領任期中にも、民主党が主導する下院で2度弾劾されており、党派を超えた調査に直面するのは初めてではない。ただ、今回の中間選挙で議会内の支持基盤は縮小し、複数の世論調査で支持率も低い水準にある。
マイク・ペンス前副大統領の首席補佐官を務め、Advancing American Freedomの会長を務めるマーク・ショート氏は、共和党議員が公然とトランプ氏に反旗を翻す可能性は低いものの、一部は徐々に距離を置くかもしれないと指摘した。また、共和党は保守主義の原点から離れており、軌道修正が必要だとの見方を示した。
党内でより広い反省が起きるかは、現時点では見通せない。新議会では予算や政策法案に加え、大統領の拒否権、トランプ政権への監督を巡る攻防が並行して続くことになる。