米証券取引委員会(SEC)企業金融部が9月25日に暗号資産に関する質疑応答を公表したことで、リキッドステーキングトークンの保有者がステーキング状態から退出する方法に改めて注目が集まっている。質疑応答では、一定の条件を満たすステーキング証明書はデジタル商品の所有権を示す「デジタル・インストゥルメント」に該当し得る一方、プロトコルを基盤とするリキッドステーキングサービス事業者が発行するトークンは「デジタル商品」に該当し得るとされた。ただし、CoinbaseのcbETHやLidoのstETHは名指しで分類されていない。
保有者にとって重要なのは、トークンを譲渡できることと、直ちにステーキング前のETHへ交換できることは別だという点だ。原資産に近い価格で売却できる保証もない。関連情報の公表時点で、イーサリアム(ETH)は2,690.39ドル。24時間では0.04%下落した一方、30日では3.10%、90日では8.42%上昇していた。このような相場環境でも、リキッドステーキングトークンの取引価格、交換の仕組み、待ち時間は、退出リスクを判断する際に個別に確認する必要がある。
SEC質疑応答が分けた「証明書」とプロトコルトークン
SEC企業金融部が示した「ステーキング証明書」の説明は、トークンの名称ではなく、証明書が表す権利に重点を置いている。証明書は、特定の資産が預け入れられていることを示すとともに、預け入れた側がその資産の所有権を維持していることを表すものとされた。
質疑応答の条件では、証明書の発行者は預け入れられた資産を支配してはならない。また、その資産を譲渡、貸し付け、担保設定、再担保設定、その他の方法で利用することもできず、発行者の第三者債権者が預け入れ資産に請求権を及ぼす状態も避けなければならない。
ただし、この説明はSECスタッフが議論した特定の証明書を対象とするもので、すべてのリキッドステーキングトークンに適用される新たなカストディ規則ではない。SECが2026年3月に公表した暗号資産に関する解釈では、デジタル商品が投資契約の対象ではなく、証明書の主な機能が所有権の証明である場合、その証明書はデジタル・インストゥルメントとみなされる可能性がある。
一方、プロトコル型のリキッドステーキングサービス事業者が発行するトークンは、正常に稼働する暗号資産システムと価値が結び付いており、市場の需給の影響を受ける場合、デジタル商品とみなされる可能性がある。
ここで重要なのは、いずれも「可能性がある」という表現にとどまっていることだ。ステーキングトークンと呼ばれているだけで、規制上の分類が自動的に決まるわけではない。SECスタッフの質疑応答もcbETHやstETHについて具体的な判断を示しておらず、スタッフ見解には法的拘束力がないため、新たな法的義務が生じるわけでもない。
SEC企業金融部が2025年8月に公表したスタッフ声明では、リキッドステーキングトークンを、預け入れた資産と累積報酬に関する譲渡可能な証明書として扱う仕組みが議論された。スマートコントラクトによるプロトコルや第三者カストディの取り決めも対象となったが、再ステーキングは対象外だった。また、サービス事業者がステーキング先を管理したり、報酬を設定・保証したり、追加的なトークン報酬の発生を支援したりする仕組みも扱われていない。声明の対象外であることは、SECがその取り決めを証券に関係すると認定したことを意味しない。
cbETHはアンラップ後にアンステークを申請
Coinbaseの米国ユーザー契約では、cbETHはCoinbaseを通じてステーキングされたETHと、手数料およびスラッシングによる損失を差し引いた報酬に対する権利を表すと説明されている。cbETHにまとめられたステーキング中のETHと報酬は、トークン保有者に代わってCoinbaseが保有するが、資産の所有権がCoinbaseに移転するわけではない。保有者がcbETHを売却または譲渡した場合、関連する原資産への権利と契約上の償還権も受取人に移る。
このため、cbETHの保有者は、原資産のETHがアンステークを完了する前に、二次市場でトークンを売却して退出を図ることができる。Coinbaseの製品説明によれば、cbETHは売却、送付、外部ウォレットでの保管が可能だ。ただし、売却は市場取引であり、価格がETHまたはステーキング中のETHの価値から乖離する可能性がある。Coinbaseは、特定の時点で買い手が存在することや、cbETHの流動性を下支えすることを約束していない。
契約に基づく償還と市場での売却は、別々の退出経路だ。条件を満たすcbETH保有者がCoinbaseアカウント内でアンラップするには、状態が良好なCoinbaseアカウントを保有し、関連するステーキング資格を満たす必要がある。地域による制限や処理の遅延が適用される場合もある。
アンラップ後に受け取るのは、ステーキング状態にあるETHだ。報酬からは適用される手数料やスラッシングによる損失が差し引かれ、直ちに利用できるアンステーク済みETHがそのまま得られるわけではない。保有者は別途アンステークを申請し、イーサリアムネットワーク上で所定の処理が完了するのを待つ必要がある。
つまり、cbETHを譲渡できることは、すべての保有者が同じ条件で直ちにETHへ交換できることを意味しない。実際の退出速度は、アカウント資格、地域、Coinbaseの処理体制、そしてイーサリアムのアンステーク手続きに左右される。
stETHはLidoの出金キューを経由
Lidoは異なる仕組みを採用している。コントラクト文書によれば、ユーザーはETHをプロトコルのスマートコントラクトに預け入れることでstETHを受け取る。プロトコルを通じてETHを取り戻す場合、保有者は出金申請を提出し、その申請はキューに入る。もう一つの方法は、stETHを他のトレーダーへ直接売却し、プロトコルの出金処理を待たないことだ。
プロトコル経由で出金する場合、キューの処理能力やイーサリアムのバリデーター退出速度が待ち時間に影響する。Lidoのリスク開示では、最終的に受け取るETHはプロトコルの会計メカニズムに基づいて算定され、バリデーターのスラッシングを含む不利な事象の影響を受ける可能性があるとされている。
stETHの直接売却は通常、より早く完了し得るが、市場に許容できる価格で取引する買い手がいることが前提となる。流動性が低下すれば、売買スプレッドやスリッページが拡大し、ETHに対するディスカウントが広がる可能性もある。
Lidoが開示するその他のリスクには、スマートコントラクト、ガバナンス、バリデーターに関するリスクが含まれる。また、stETHとwstETHについて、プロトコルレベルで広く適用される規制上の承認を得ているわけではないと説明している。したがって、stETHの「流動性」は、トークンを市場で譲渡できることを指すのであって、プロトコルがいつでも、どのような価格でもETHへの交換を保証することを意味しない。
規制分類だけでは償還条件は決まらない
cbETHとstETHはいずれも、ステーキング中のETHが退出処理を終える前にトークンを譲渡できる。ただし、カストディ構造と償還経路は異なる。cbETHの保有者は、Coinbaseの契約条件と資格要件に従ってアンラップした後、アンステークを申請する必要がある。stETHの保有者は、Lidoの出金キューやバリデーターの退出状況を待つか、二次市場で買い手を探すことになる。
どの経路を選んでも、トークンの市場価格が原資産であるステーキングポジションの価値と一致するとは限らない。市場での売却は買い手の数、スプレッド、スリッページに左右され、プロトコルによる償還はキュー、ネットワーク処理、資産損失の要因から影響を受ける可能性がある。SECが9月25日に公表した質疑応答も、証券法上の分析における特定の取り決めの分類可能性を扱ったものであり、いずれかのトークンが常時アンステーク済みETHに交換できると確認したものではない。
保有者がリキッドステーキングトークンの退出条件を確認する際は、預け入れた資産を誰が保有しているのか、誰が交換を担うのか、最初の手続きで何を受け取れるのかを確認する必要がある。あわせて、キューによる待ち時間、資格や地域の制限、スラッシング、相場でのディスカウントが最終的な受取額や退出時期にどう影響するかを、商品ごとの規則に照らして見極める必要がある。