米国株、3日間で業種間の差が拡大
2026年10月23日の取引終了時点で、S&P500連動ETF(SPY)は3営業日で1.18%下落した。一方、業種別の値動きには大きな差が生じている。エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLE)は2.00%上昇したのに対し、コミュニケーション・サービス・セレクト・セクターSPDRファンド(XLC)は4.25%下落し、両者の差は6.25ポイントに達した。
今回の相場は、単純な「株式市場全体の下落」とは言い切れない。一部の業種にはなお資金が向かっているが、これまで相場をけん引してきた分野では選別が進んでいる。指数全体の上げ下げよりも、業種・セクター間の相対的なパフォーマンスが注目される局面だ。
主要11セクターではエネルギーが最も好調で、公益は1.62%上昇した。生活必需品、不動産、金融、素材も上昇。一方、コミュニケーション・サービス、一般消費財、資本財、テクノロジーはS&P500を下回った。
ただし、3営業日の動きだけで持続的な業種ローテーションが始まったと判断するのは早い。今後は、上昇したセクターが相対的な優位を維持できるか、また市場全体が反発した際にも下落セクターが出遅れ続けるかが焦点となる。
通信サービス、3日連続で下落
XLCは10月21日から23日まで3日続落し、日々の下落率は1.11%、1.42%、1.78%だった。売り圧力は日を追うごとに強まった。
Meta Platformsが追加の資金調達計画を公表し、人工知能(AI)への投資を拡大する方針を示したことで、市場では次の段階のAIインフラ整備に必要な投資規模、調達コスト、見込まれる収益が改めて意識された。Metaを含むAI関連企業には売りが広がり、多額のインフラ投資が十分な収益につながるのかを見極めようとする動きが強まった。
通信会社も、無線通信分野で新たな競争が生じる可能性を示す材料の影響を受けた。ただし、通信サービス・セクターにはデジタル広告プラットフォーム、従来型の通信事業者、娯楽企業などが含まれる。XLC全体の下落が、すべての構成銘柄に同じ経営上の問題があることを意味するわけではない。
初期の売りが一巡した後、XLCがSPYを再び上回れるかが次の確認点になる。市場全体が上昇する局面でも通信サービスが出遅れ続けるなら、現在の相対的な弱さがより明確になる。
原油高がエネルギー株を押し上げるも、銘柄差は大きい
エネルギー・セクターの3日間の上昇は、10月23日の強い値動きによるところが大きい。同日のXLEは2.60%上昇した。中東からの供給が影響を受ける可能性への懸念が強まり、ブレント原油価格は10月23日に一時1バレル=約116.72ドルまで上昇した。
原油高は一部のエネルギー生産会社の利益見通しを押し上げるが、恩恵の度合いは企業ごとに異なる。操業コスト、精製事業の構成、保有資産の内容によって、原油価格の上昇がキャッシュフローや利益に反映される程度は変わる。
エネルギーETFの資金動向も一様ではない。XLEには新たなETF設定資金が流入した一方、探鉱を主軸とする一部の商品からは資金が流出した。セクターが上昇していることと、関連するすべての投資商品が買われていることは別の動きであり、好調なセクターだからといって、すべての資産が同じ条件にあるわけではない。
市場参加者にとっては、急上昇した銘柄をそのまま追うより、いったん調整した後に重要な水準を維持し、再び資金を集められるかを確認することが、トレンドの定着を見極める材料になり得る。長期投資家は、商品価格だけでなく、企業のキャッシュフロー、バリュエーション、財務内容も踏まえてエネルギー企業を評価する必要がある。
テクノロジー内部でも明暗、ソフトウエア高・半導体安
テクノロジー・セクターでは業種間の差がさらに鮮明になった。テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLK)は3営業日で1.19%下落したが、内部の値動きは大きく異なる。VanEck半導体ETF(SMH)は約3.51%下落した一方、iShares拡張テクノロジー・ソフトウエアETF(IGV)は約3.42%上昇し、差は約7ポイントに広がった。
市場のテクノロジー株に対する評価は、「テクノロジー全体が上がるか下がるか」という段階から、企業ごとの事業構造を区別する段階に移っている。高額なAIインフラ投資を継続的に必要とする企業と、異なる収益構造や利益率、設備投資負担を持つ企業が選別されている。
現時点で半導体株の下落を、AIテーマから市場全体が離れているサインと解釈することはできない。10月23日には複数の半導体株で下げ止まりの兆しも見られ、買いが完全に消えたわけではない。今後はソフトウエアが半導体を上回り続けるのか、それとも半導体株が再び相場の主導権を取り戻すのかが焦点となる。
ディフェンシブ株は相対的に底堅いが、一方向の上昇ではない
公益セクターは3営業日で1.62%上昇し、生活必需品は0.58%上昇した。電力、食品、家庭用品は、景気が減速しても需要が比較的安定しやすいディフェンシブ業種とみなされる。
ただし、両セクターの日々の値動きは一貫していない。生活必需品は木曜日に3.31%上昇したものの、金曜日には1.92%下落した。公益も金曜日に下落した。米10年国債利回りはなお高い水準にあり、5%に近い。債券利回りの上昇は高配当資産の相対的な機会費用を高めるほか、公益や不動産など金利に敏感な業種の資金調達負担を増やす。
下落するS&P500を上回っているからといって、絶対リターンがプラスとは限らない。また、相対的な強さが続くとも限らない。直近の勝ち組に資金が集中しすぎれば、ディフェンシブ株も資金の混雑を受けて再評価される可能性がある。
ETFへの資金流入は記録的、ただし一部に集中
ETF市場の資金動向にも、相場と同じような分化が表れている。ETFGIの最終集計によると、2026年9月に米国上場ETFへは1529億3000万ドルが流入し、年初来の累計流入額は過去最高の1兆5600億ドルに達した。欧州ETFにも9月に510億4000万ドルが流入し、年初来の累計は4324億5000万ドルと過去最高を更新した。
この時点で2026年末までにはまだ3カ月を残していたが、米国と欧州のETFはいずれも、すでに従来の通年記録を上回っていた。一方、9月のETF総資産は両地域で小幅に減少した。米国ETFの資産は8月末の16兆3600億ドルから16兆2400億ドルに、欧州ETFは3兆9700億ドルから3兆9400億ドルに減った。
新たな資金流入と保有資産の時価変動は別の要因だ。投資家が商品へ資金を入れ続けても、組み入れ資産の価格が下落すれば、総資産は減少し得る。
米国では9月、株式ETFに410億2000万ドル、債券ETFに400億8000万ドルが流入し、両者はほぼ同規模だった。商品ETFには37億4000万ドル、アクティブ運用ETFには611億6000万ドルが流入した。アクティブ運用ETFは株式と債券の双方に投資する場合があるため、これらの数字を単純に合算することはできない。欧州では株式ETFに263億ドル、債券ETFに94億1000万ドルが流入した。
米国と欧州の9月の総流入額はいずれも8月を下回った。資金フローだけで、投資家がリスクを削減しているのか、資産配分を進めているのかを判断することはできない。ただ、株式と債券ETFへの流入が近い水準にあることは、一部の資金が株式市場への投資を続けながら、債券や分散投資にも配分していることを示している。
米国ではわずか20本のETFに合計813億4000万ドルが流入し、そのうちSPYが107億ドルを占めた。欧州では、原油価格の下落で利益を得ることを目指すレバレッジ型の逆連動石油商品に61億ドルが流入した。ETF資金の一部が、伝統的な長期保有ではなく、戦術的な弱気見通しを反映していることが分かる。
9月のETFデータと、10月21日から23日までのセクター別の値動きは異なる期間のものだ。そのため、今回のローテーションが資金面で確認されたと直接結論づけることはできない。ただ、両方のデータは、ETF全体への需要が強くても、すべてのセクター、資産クラス、個別銘柄に同じように資金が向かうわけではないことを示している。
Lennarが逆行高、85ドル近辺を維持できるか
最近軟調だった一般消費財セクターでは、Lennar Corporation(NYSE:LEN)の株価に改善が見られた。米国の大手住宅建設会社の一つであるLennarは、9月の決算発表後に調整したものの、その後は反発に転じている。
10月22日、LENは8.69%上昇し、8月以降株価を抑えていた下降チャネルを上抜けた。10月23日の終値は84.92ドルで、ブレークアウト水準を維持した。2営業日では約9.3%上昇した。
10月21日から23日の終値ベースでLENは9.29%上昇したのに対し、均等加重型の一般消費財ETF(RSPD)は0.57%下落した。Lennarのセクターに対する相対的な上昇率は9.86ポイントに達する。株価は10月14日の取引時間中の安値71.78ドルから約18.3%戻した。
この動きだけでLennarが長期的なトレンド転換を完了したとは判断できない。ただ、短期的には所属セクターを明確に上回っている。今後は、ブレークアウト後の価格を維持できるか、住宅市場の状況、資金調達条件、同社自身のキャッシュフローが反発を支えられるかが確認点となる。
来週はローテーションの広がりを確認
今後の相場については、三つの展開が考えられる。第一に、エネルギーが相対的な強さを維持し、通信サービスの出遅れが続くケースだ。この場合、相場の主導権が少数のセクターにさらに集中する可能性がある。第二に、半導体が下げ止まり、テクノロジー株がSPYを上回る一方、通信サービスも持ち直すケースだ。直近の調整が、バリュエーションや設備投資を改めて評価する動きだったことを示す可能性がある。
第三に、一般消費財と資本財の軟調さが続き、最近堅調だったディフェンシブセクターまで下落するケースだ。その場合、市場の焦点は「どのセクターが上昇しているか」から、株式市場全体の物色の広がりが悪化しているかどうかへ移ることになる。
10月27日から28日に予定される米連邦準備制度理事会(FRB)の会合と、同時期に発表される主要テクノロジー企業の決算は、今回の変化が短期的なローテーションなのか、より長期的な主導権の移行なのかを判断する材料になる。現段階ではETFへの資金流入は続いているものの、セクター、業種、個別銘柄のパフォーマンス差は拡大しており、資金の向かう先と価格の相対的な強さを並行して確認する必要がある。